売上・顧客満足度ともトップレベルの営業マンの特徴を発見
2017/12/27
思考プロセスを明らかにするインタビュー手法を以前紹介しました。今回は、思考プロセスの違いが成果にどのように関係しているかの、具体的事例紹介します。
コンサルティング営業の真髄を垣間見た気がします。
(文中は便宜上「営業マン」と表示していますが、女性営業も含みます)
目次
当時の営業マンの実態
当時、ある日本のカーメーカーで、カーディーラーで問題にしていたのは、販売量のみならず、CS(顧客満足度)でした。
それは、①「販売・CS両方高い営業マン」を目指して欲しいが、実際は②「販売高い・CS低い」(販売マン)と③「販売低いがCS高い」(CSマン)という二種類の営業マンが全体の半分以上いるという実態でした。
[speech_bubble type="think" subtype="L1" icon="ikari.jpg" name="販売マン"]グイグイ販売、でも、顧客満足度低く![/speech_bubble]
[speech_bubble type="think" subtype="R2" icon="kao.jpg" name="CSマン"]顧客満足度は高いけど、販売はあまり↓[/speech_bubble]
一方、④両方低いのは新人も含めて経験が浅い人もいるので、業務知識やスキルの未成熟な人達だから、これから教育すれば良いというものでした。
当初の仮説
当時の考えは、
1️⃣①「販売・CS高い」=②(販売マン)+③(CSマン)
それとも、
2️⃣①「販売・CS高い」=/=②販売マン+③CSマン
のどちらか?
この議論をする前のスタッフ達は、無意識に1️⃣の仮説を持っていましたが、話し合いをしてる間に、「2️⃣ではないか?」という意見に変わっていきました。
この2️⃣の仮説には、③や②の延長に、①は存在しないため、根本的な何らかの教育をしなければならないということになってきます。
討議では結論が出るものではありませんでしたので、結構な規模の調査を行いました。その結果が次のようなものでした。
三者の違いで、当初分かっていたこと
当初、①「販売・CS両方高い」と他の②(販売マン)や③(CSマン)との違いは、ほとんど分かっていませんでした。
ただ、以下の2点は、調査する前から分かっていた事です。
なお、販売量が高い営業マンとは、2年以上の間トップ10%に所属している人達のことです。
②販売マンについて分かっていた事
活動量と顧客数は、①「販売・CS高い」と②(販売マン)では、ほとんど同じでした。
そして、両方に通常のインタビューをしても違いを見つけられませんでした。敢えて言うなら、②(販売マン)の方が販売指向が強いというぐらいでした。
[speech_bubble type="think" subtype="L1" icon="ke.jpg" name="著者A"]やってる事は同じだ![/speech_bubble]
③CSマンについて分かっていた事
①「販売・CS高い」と③「CSが高いだけ」の営業マンとの違いは、③の実績顧客数が少ないという事です。まあ、販売高が低いのだから当たり前ですが、保有顧客数は同じでした。
そして、活動量もほぼ同じでした。
発見した特徴
今回実施したインタビューの手法についての参考リンク:その時、何を考えていたか!思考プロセスのインタビューでの聞き出し方
インタビューを実施してみると、セールス・プロセス(準備、アプローチからクロージン、フォロー)は、三者とも、まったく同じでした。当然と言えば当然です。
違いは、もっと細かな点ですが、非常に重要なことでした。
それは、各セールスプロセスで微妙な行動とその背景にある営業マンの、思考プロセス、この場合は、「関心事」が違っていました。
発見した①「販売・CS高い」と②(販売マン)の違い
1.②販売マンの特徴
①と②との決定的な違いは、アプローチの前半の顧客との接触段階においてです。
この段階で、②(販売マン)の関心事は、「この顧客には、何が売れるだろうか?」という狩猟者のような思考です。
したがって、アプローチ段階でのヒアリングは、顧客が「どのような車を好んでいるか?」という好みを聞き出そうとすることを重視します。
そして、「見込みになる顧客かどうか」を鋭く判断します。むしろこの判断を最重視している人がこのグループに多くいました。何故なら、この判断によって自分の次以降の顧客への時間のかけ方が違ってくるからです。
販売量が継続的に高い営業マンは、平均営業マンの5、6倍の売上がありますから、非常に忙しく、できるだけ効率よく少ない時間で、最大の売り上げを獲得しようとするものです。そうでなくは、何年も高い売り上げを上げ続けることは困難です。
他の業界でも高業績の営業は「顧客を選ぶ」「売れない顧客には訪問しない」という思考がよく見られます。
話を戻すと、この効率指向のため、それ以降のアプローチから提案、デモのステップではあまりエネルギーをかけません。そうは言っても優秀な営業ですので見劣りするようなことはしません。むしろスキルフルなため短時間でも素晴らしいものです。
そして、クロージングの段階が来ます。その段階で、顧客は意思決定を先延ばしにしたり、他の車(色や排気量や細かな仕様の違いうもの)と迷ったりします。
このタイミングで②の販売マンの人達は、心理的エネルギーをかなり費やします。ここの段階でクロージングできなければ、短期的な売り上げが下がりますし、今までかけた時間とエネルギーがすべて無駄になってしまうからです。
[speech_bubble type="think" subtype="L1" icon="ikari.jpg" name="販売マン"]売れる顧客の見極めとクロージングが大事[/speech_bubble]
しかし、これでは売り上げは上がりますが、CSを下げてしまうことになります。
営業マンのクロージングが、顧客に心理的プレッシャーをかけてしまい、顧客に買わされたという良くない印象を与えてしまったのです。ピーク時と最後の印象が全体の印象を決定づける中で、最後がこれでは顧客満足度は下がります。
2.①「販売・CS両方高い営業マン」の特徴
では、①「販売・CS両方高い」は、どうしているかは、下記の通りです。
なお、売上ランキングやその売上高は、②(販売マン)と同等です。
アプローチの前半の顧客との接触段階において、顧客に、近づかず遠からずで、それほど積極的ではありません。もちろん対応は如才ないのですが、心的エネルギーはあまり使いません。
次に、提案(コンサルティング)前のアプローチ段階でのヒアリングで、「車を何に使うか」「どのような使い方や乗り方をするのか」という「使用」や「その環境」をよく聞き出します。それは、家族構成や車の支払いに関することまで結構広い範囲を聞き、時間とエネルギーを使います。
何故なら、顧客にとってのベストチョイスが何かを自分が考え出そうとしているからです。
具体的にインタビューでは、「後になって、お金が足りないとかだと、結局、購入は無理です。また、クルマを使ってみてあまり気に入らないと、次は無いですから」とか。
「それに、お客さんは案外、車の使用上の問題を車選びにあまり考えないのです。たとえば、高速道路を毎月1回50キロ走るということ聞いたときに、排気量をワンランク上のものを勧めました。もちろん予算は厳しくなりますけど。後から『疲れが違うね』と感謝されました」というものがありました。
そして、クロージングの段階では、この両方高い営業マンは、ほとんどエネルギーを使いません。「ノー・クロージング isベスト・クロージング」をそのまま実践しています。
顧客が悩んだり、意思決定を先延ばしにしても、「あの車が一番の選択ですよ」という程度で、無理なクロージングはしません。
[speech_bubble type="think" subtype="L1" icon="kao.jpg" name="両方高い"]顧客にとって一番良い車は私が一番知っている[/speech_bubble]
もう既にお分かりのように、だいぶ②の販売マンとは力点とベースとなる考え方が違います。
①「販売・CS高い」と③(CSマン)との違い
③(CSマン)は、非常に単純です。各顧客に時間とエネルギーを使いすぎて、クロージングできる顧客が少なすぎたのです。
顧客のわがままに時間を費やすので、CSは高くなりますが、同じやり方で、売上を上げようと顧客を増やすためには、今までの2倍働く必要がありました。
次の機会には、この調査結果に基づいて、どのような研修を開発したかを投稿します。