コンピテンシーを研修で開発する方法
2017/12/27
今回は、「コンピテンシーて、開発できる?」というテーマで行きます。何故なら、このテーマは、レジリエンストレーニングに密接に関連しているからです。
目次
コンピテンシーの開発できる部分/できない部分
知識習得の難易度が1だとするなら、スキル習得の難易度は3か4ですね。さらに、コンピテンシーの習得は、7か8かもしれません。
ただ不可能では無いという事は言えます。何故なら、コンピテンシーが指す思考方法や思考パターンは、比較的新しい脳の部分で見られるため学習可能です。
しかし、動機の脳は、扁桃体のようなエモーションを支配している部分と深い関係があるため、後天的な学習することは難しいとされています。
ですので、コンピテンシーは学習できる部分とできない部分があります。
意図的反応と無意識的反応
前回のブログで、「コンピテンシーは、意図的行動」という事を述べました。
ハイパフォーマー研究では、彼らは、何らかのきっかけで思考し、何らかの行動を取るのに対し、平均的な人達は、何も気づかないか、気づいても無意識に反応してしてしまっている。この差がパフォーマンスとして現れてきます。
したがって、ハイパフォーマーはこのような意図的行動は、しっかり記憶しています。「意図」とは、「こうしたい」「このようなものを求めたい」というゴールを持つことです。それを目指して何らかの行動を取り、意図するものを手に入れるか、入れられないかの結果が分かります。これは、同時に取った行動が効果的だったかどうか理解できます。そして次の行動をブラッシュアップしていくという学習プロセスが起こります。
それに対して、平均的な人達は、無意識に反応しているだけでですから、その行為には意図が無く、取った行動の良し悪しに関心を払う事も無く、記憶すらありません。
このギャップが、能力開発のニーズです。
脳の反応の違い
しかし、スタート段階から両者が違っていることに難しさを感じますね。下記に事の起こり(①刺激)から、⑧行動までの一連の人間の中で発生している一瞬の脳内プロセスを記載しました。
①刺激→②認知→③判断→④認識→⑤生物学的反応→⑥感情→⑦予測的思考→⑧行動・発言
平均的な人達は③で止まっている可能性が高いと考えられます。これには少し説明が必要ですね。
注意してほしいのが「認知」と「認識」とを分けているという点です。意味は文字通りで、①刺激があって、それを私たちは、目、耳等の五感で認知します。まだ、この段階では、情報が入ってきただけで、その情報が何であるかは判断していません。
この情報が過去のどの記憶とどのように関係しているかを照らせ合わせて③判断していきます。そして、その判断を踏まえて意識し、④認識します。この段階で、「あまり関係がない」と判断されると、④認識まで行きません。逆に「これは生命の危機だ」と④認識すると、⑤⑥そして、⑦予測的思考を飛ばして、⑧行動へとジャンプすることもあります。この辺の脳科学の参考リンク:脳のミカニズムを知らないとレジリエンスを語れない
ですので、平均的な人達は、認識されずに通りすぎるのです。
その一方ではハイパフォーマーは、危機と認識するか、チャンスと認識するかは別として、⑦予測的思考→⑧行動・発言と進んでいきます。それも極めて冷静で、論理的に。
①刺激→②認知→③判断→④認識→⑤生物学的反応→⑥感情→⑦予測的思考→⑧行動・発言
研修での開発方法
だからといって、平均的な人達に、「認識しろ!」「気づけ!」というアプローチは教育として効果的ではありません。
では、どうするか?
それは、ハイパフォーマーと同じ思考をトレースしてみることから始めると効果的です。ハイパフォーマーが、何に注目し、何から考え、次にどのように考えを巡らして行くかというをなぞるのです。
ケースを使って進めていくと比較的容易です。
例えば、車の販売員の場合。「ある地方都市で、日曜の午後に50歳過ぎの夫婦が来店してきました。販売担当である貴方は、二人に話かける前にどのような点を見て、どのような質問を準備しますか?」というケースを皮切りに、幾つかのケースを物語のように続けて出題していきます。
トレーニング的には、⑦予測的思考から始めて、④認識、②認知の順に学習して行きます。
①刺激→②認知→③判断→④認識→⑤生物学的反応→⑥感情→⑦予測的思考→⑧行動・発言
自分が見本とする素晴らしい上司や先輩から仕事を教わった人は、後年、自分が困ったときに、「あの人なら、どう考えるだろうか?」と思い、自分の頭に考えが浮かんでくるようになるのと同じ要領で、トレーニングして行きます。
まとめ
思考プロセスを学習するのは、大変ですね。でも、不可能ではありません。この能力開発やトレーニングの方法は、後のブログに継続して掲載していきます。
一方、レジリエンストレーニングで、「②認知」を変えるという事を簡単にアプローチしようとしますが、そんなに簡単でないことが理解できたと思います。
また、感情の問題をどのように処理していくかという別の課題もあります。これも、後のブログで触れていきましょう。
参考:漠然とした不安に対処する