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認知心理学

認知療法と認知心理学の関係、そしてゲシュタルト心理学VS構成主義

2017/12/28

今回は、良く聞くけど面倒だから曖昧にしがちなものを取り上げみてました。

認知療法と認知心理学では、「認知」の意味が多少違います。

それに、認知心理学と認知科学とは同一ではありません。

さらに、ゲシュタルト心理学と構成主義は、その昔、心理学が哲学から別れた頃から派生した考え方ですから、心理学というより哲学的な色彩を感じます。

目次

「認知」の定義の違い

「認知(cognition)」を概括的に定義すると、「外部の様々な情報を後天的に取得した知識や記憶、学習の影響を受けながら理解するプロセス」のことです。

「目・耳・鼻・舌・皮膚の五感を司る感覚器官から直接的に情報を取得するプロセス」のことという狭い範囲で「認知」を使っている場合と、

それだかけで無く、「人間の知的な情報処理過程全般」という広い意味で「認知」という言葉を使っている場合があります。

認知療法の認知

認知療法(cognitive therapy)は、臨床心理学ですが、その「認知」の概念は、認知心理学(cognitive psychology)や認知科学(cognitive science)の概念とは少し異なっています。

認知療法は、効果研究によって統計学的根拠を持っていますので「科学的根拠に基づく心理療法」と言われています。

認知療法で用いられる「認知」は、「外界の出来事や人間関係をどのように受け止めているのか」「自分の思考・他者の行動・周囲の状況をどのように解釈しているのか」という主観的(個人的)な認識内容のことを指します。

[speech_bubble type="think" subtype="R1" icon="ke.jpg" name="リンちゃん"]認知療法の認知は、個人の受け止めている内容ね[/speech_bubble]

認知心理学の認知

認知療法と認知心理学の認知概念は、「外界の対象や事象を認識すること」という意味では共通しています。

しかし、認知心理学では生理学的なメカニズムの解明や科学的実験による認知現象の再現や検証を重視しています。

[speech_bubble type="think" subtype="L1" icon="ke.jpg" name="リンちゃん”]認知心理学の認知は、人間の身体の神経や脳、感覚器官の仕組みを含めたものね[/speech_bubble]

生理学的基盤を持つ認知心理学の「認知」とは、科学的客観性と実験的再現性がある情報処理過程を研究の対象にしてまます。まさに、身体器官(脳・神経・感覚器官)の生理学的しくみに重きを置いています。

認知心理学は、「人間の知のメカニズム」を科学的に研究する心理学分野です。

具体的には、知覚・運動・記憶・学習・言語・思考・エモーション等が認知心理学の研究対象であり、脳科学(脳機能科学・大脳生理学)や神経科学(神経心理学・生理心理学)、情報科学(AI・ロボット工学・情報工学)などと相互に深い関係があります。

「認知科学」とは、「認知機能の一般法則」の確立をめざすものです。したがって、「人間の知のメカニズム」を解明しようとする認知心理学を包含します。

[speech_bubble type="think" subtype="R1" icon="ke.jpg" name="リンちゃん"]認知科学は、人間以外も含めた認知の研究分野の事 [/speech_bubble]

ですので「認知科学」という名称は特定の研究分野を示すものというより、自然科学や社会科学というような総称みたいですね。

「人間の知のメカニズム」を考えると、人間は外界の対象(客体)をどのように認識するのかという哲学の認識論を思い起こす人もいることでしょう。

ゲシュタルトと構成主義

「ゲシュタルト」という言葉を聞いたことがあるでしょう。この言葉の意味は「全体は、部分の集合とは異なる全体固有が全体の特性を持つ」ということです。

例えば、「あなた」という人間を分解していけば最後は窒素や炭素等になりますが、分解したものを組合わせても、「あなた」にはなりません。「あなた」自体が独自の存在という考え方が「ゲシュタルト」です。

これとは、まったく逆の考え方が「要素主義」「構成主義」です。この考え方は「要素を結合すれば全体を説明できる」というもので、全体を構成しているものが重要というものです。

今流行りの「社会構成主義」も同じで、「社会を構成している一人一人がどのように社会を認識しているかによって社会がどのようなものか」が決定するという考え方です。

ゲシュタルト心理学

心理学に話を戻すと。

オーストリアのグラーツ学派を起源としてベルリン学派へと研究成果が継承されていった「ゲシュタルト心理学(Gestalt psychology)」というものがあります。

これは、視覚や聴覚、嗅覚など五感の知覚機能を対象として研究する知覚(感覚)心理学(perceptive psychology)という分野があり、そこで発生しました。

創始者は、ヴェルトハイマー(1880-1943)という人だそうです。

知覚心理学にもたらした最大の発見は、『従来の構成心理学で用いられてきた要素主義では解明できない心理現象がある』ということでした。

構成主義の心理学

それに対して、実験心理学(experimental psychology)を創始したウィルヘルム・ヴント(1832-1920)は、自分の内面心理を内省的に観察する内観法を研究方法とし、人間の意識や知覚は各構成要素に分解できるという要素(構成)主義の立場を取っていました。

要素主義は、E.B.ティチナーの構成主義(constructivism)へと発展していきます。

しかし、「全体の意識が部分の要素の結合によって説明できる」という心理学上の構成主義はあまり盛んにはならなかったようです。

構成主義について、箱が現れる不思議な話しはこちらから

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