漠然とした「不安」に対処する:簡単な認知行動療法の応用
2017/12/27
「不安」が、どんな脳のメカニズムで起こるかを説明し、その解消法を紹介します。
[speech_bubble type="think" subtype="L1" icon="kf.jpg" name="心理学者"]漠然としてるから「不安」はっきり分かってたら「恐怖」です。 [/speech_bubble]
目次
不安の功罪
何故だか落ち着かない。ひどい時は、不安で眠れなかったりする。このようなことは、誰でもあることです。しかし、それが少し長い間続いたり、その理由がはっきりせず漠然とした不安感に覆われてると、「私、大丈夫?」と思える時があります。
不安は、行動を起こす大きな原動力となりますが、それが過大になったり、長く続いたりすると心身に大きなストレスを与えます。
このようなストレス症状を、心理学でいう不安障害や恐怖症というものです。しかし、このような状態は、心理学では、最も簡単な部類にはいります。
「不安」は扁桃体から
扁桃体は感情と結びつきやすい記憶も持っていて、長期記憶をつかさどる海馬と隣接しているため、扁桃体がエモーション(原始的感情)を発生させる時に、海馬と相互にやり取りをしています。時間は1000分の1の単位ですが。
[speech_bubble type="think" subtype="L2" icon="ikari.jpg" name="扁桃体"]不安、不安 [/speech_bubble]
[speech_bubble type="think" subtype="R2" icon="kao.jpg" name="海馬"] じゃ、覚えておく![/speech_bubble]
不安障害や恐怖症の脳における原因のひとつが、この扁桃体が活性化しすぎていることです。
扁桃体についての参考リンク:その瞬間!脳がハイジャックされ、感情に支配される
扁桃体がストレスホルモンであるグルココルチコイドを放出し、ストレス対応をつかさどる視床下部が反応し、極端な場合はパニック発作を起こします。
パニック発作は、不安障害の一瞬で、激しい動機や発汗を伴い、死にそうな発作です。
扁桃体は記憶とも関係していて、恐怖体験をするとその感情と一緒に記憶が簡単に定着するということが、脳科学では証明されています。
丸暗記の一夜漬けのときは、効果がありそうですね。ただ、緊張と恐怖づけにならないといけません。
「不安」に対処する方法
さて、不安障害と恐怖症からの脱出です。
具体的な処置の前に、不安と恐怖を分けて取り扱う必要があります。
恐怖とは
恐怖は、対象が明確なものです。「高いところが怖い」とか、「クモが怖い」というものてす。それに対して、不安は、対象が不明確です。「漠然と怖い」という感じです。
不安に対する克服は、恐怖に対するものより、少しやっかいです。
不安をヒモ解く
不安はいくつかの恐怖が重なって、一つ一つの恐怖の対象が分からなくなってしまった状態です。
まず、不安をひも解いて、1つづつ、どんな恐怖があるか?何が怖いか?ということを、丹念にリストアップすることから始めます。
例えば、同僚にバカにされる/上司に叱られる/職を失う/家族にみはなされる
じっくり時間をかけて、漏れなく。
時間かけ、忍耐を持って。だから、一緒におこなう人が必要なのですね。臨床心理士なら、認知的定式化を使って教えてくれますからね。
不安を恐怖に分解できたら、その恐怖の1つづつに対策を打ちます。
その前に、脳内のセロトニンの分泌不足を引き起こす脳自体の機能障害の可能性が、神経内科通院者の20%程度あります。
症状が重いと思う方は、薬を求めて神経内科に行くことをお勧めします。それが最も早く、安全な対策です。それに最近は凄く手軽に神経内科に行くことができます。
余談ですが、神経内科は1997年に厚労省が新たに認めた医療科です。
認知行動療法を使って
では、薬と同等以上の効果があり、一生効果が継続することが証明されている認知行動療法を紹介しましょう。
もともと認知行動療法は、認知療法と行動療法の二つの方法で構成されています。
この方法は、脳科学的には、扁桃体関連の記憶の上書きと、前頭葉による再評価の強化のプログラムです。
行動療法
始めに、行動療法を紹介します。
行動療法は、行動心理学がベースとなっていて、ある刺激に対して不適切な反応(行動)を、異なる反応として習得させていくアプローチです。
これは消去学習で、臨床心理士がよくおこなう方法です。さすがに、この方法は、補助者がいないとひとりでは無理ですね。
恐怖の対象に接しても自分が想像するようなネガティブな結果が来ないことを経験することで、恐怖記憶を消去するという方法です。
例えば、「ヘビが怖い。暗い所を見るとヘビが出てこないかと考えて、近づけない」という症状です。
補助者がヘビに似た絵を見せ、本人が落ち着くまで待ち、落ち着いたら、その絵手で触らせます。
次に少しデフォルメしたヘビの絵を見せます。同じように手で触ってもらいます。無理なら、補助者自身が触って見せ、補助者の手の上から触ってもらいます。
時間をかけ、直接触ってもらいます。破いてもらっても良いですね。
次に、もう少し本物に近い絵、そして、小さなヘビの写真、普通サイズのヘビの写真で同じプロセスを経験させます。
ポイントは、段階的に、そして、心理的壁は補助者と一緒に乗り越え、最後は自分ひとりで挑戦するばパターンです。
次は、ガラス越しにヘビが見える部屋へ入り(事前にしっかり説明し納得の上で)、補助者が先に部屋に入って、手招きするように。
ヘビをガラス越しにじっくり見れるよなるまで。最後は、ヘビのいる部屋に。最終には、本人の手で触ってもらいます。
これで消去学習は終了です。
やはり補助者がいないと、心理的壁が越えられない原因は、扁桃体関連の記憶ですね。
認知療法
二つ目は、認知療法です。これはレジリエンストレーニングでもよく扱います。
ABC理論や「思考の大惨事化」というテーマでトレーニングではおこないます。
ポイントは、事象や出来事の自分の解釈パターンを理解し、その解釈を変えてみるとか、自分の非現実的な思考を見分ける練習をします。
サラリーマンが下記のような恐怖を感じていたとします。
同僚にばかにされる/上司に叱られる/職を失う/家族に見放される
上司に叱られることはあるでしょうが、職を失うというのは、飛躍しすぎですよね。
同僚にばかにされる/上司に叱られる/職を失う/家族に見放される
ただ、本人は論理的であると信じています。確かに、一つ一つのつながりは、許容範囲内のようにも見えますが、現在まだ会社にいながら、家族にみはなされる?と、考えるのは全体から見ると非現実的に見えますね。
この全体の景色を、本人が自分で気づかなければなりません。
このアプローチは、不安障害や恐怖症の脳における原因のひとつになっている前頭葉による再評価の問題です。この再評価を強化し、一度認識し、感じた感情を含め前頭葉で考え直し、落ち着つきを取り戻すというやり方を応用します。
例えば、「後で考えたら・・・あれは、違ってたかもしれない」とか「なぜ、あんなに私に強く当たるのか分かりました」という思考です。
レジリエンストレーニングへ
恐怖の対象によって治療方法を選択しておこなうのがプロの医師ですが、レジリエンス的には、自分に合う対処方法を身につければ十分です。
参考リンク:レジリエンス強化!ここから始めよう
ABC理論についての参考リンク:心理学の位置づけ知ってる?認知療法:ABC理論