知っている自分自身は、ほんの一部分だと知ってますか?:カールロジャース
2017/12/30
「自分のことを、なぜ知る必要があるのか?」という疑問を持ったことありますか?放って置くと、内的葛藤で無駄に心的エネルギーを使い果たすことになります。
「自分のことを知らなくて困ったことありますか?」という質問ではどうでしょう?
「いや〜、自分のことを知らなくて困ったことは無いな」という人達がほとんどだと思います。
[speech_bubble type="think" subtype="L1" icon="kao.jpg" name="自分"]自分の事は、自分が一番知ってるでしょ。違う⁈[/speech_bubble]
今回は、人間性心理学のカールロジャースの理論です。
目次
自己イメージ/自分の知っている自分自身
中には、「自分のことを知っている」という人もいますが、その人達は、自分で「自分はこんな人間だ」という自己イメージがあるだけで、それは自己を理解していることになりません。
あえて言うなら、「自分は、自分のことを、このように捉えている自分だ」という事を自己表現できるとこまでできれば、かなり自己理解が進んでるいるのですが。
??と、今、感じた方、
「自分らしい」とか「自分らしくない」ということがありますね。この「自分らしい」の基準となる自己に対するイメージが、自己イメージ(自己概念)です。
自己イメージとのずれが心的負担に
この自己イメージと異なることを自分が行うことがあります。それに自分で気づかなければ、他者との関係に自分の意図しない影響を与え、いざこざの原因や心理的負担となってしまいます。
また、自己イメージが理想化している場合は、実際の自分とのギャップに悩み、自己否定や罪悪感、自己嫌悪につながってきます。何よりも自信が持てなくなってきたりもします。
「本当の自分は、もっと優秀なのに、どうしてあんなドジをやらかしたのだろうか」と自分を攻めるパターンです。
アガリ症の人も「自分は、上手くやれる筈だ」という理想の自己イメージが強く、本番でちょっとした失敗に自己否定の思考がよぎり、ガタガタと崩れるパターンです。
これらのこと全てが「自分を知らないこと」が原因となっています。
カールロジャースの説明
カウンセリングで有名なカール・ロジャースは、次のように説明しています。
人は、自分はこんな自分であるという「自己概念」を持っています。そして、人との関わりで自分が実際に行ったり、反応したりする実際の「体験する自己」があります。
「体験する自己」と「自己概念」が同じであれば、容易に「体験する自己」を受容します。
要は、「いつもの自分らしい自分だ」ということで、簡単に受容するということです。
ところが、ときとして、自分の持っている「自己概念」(自己イメージ)と違う経験(体験する自己)をする場合があります。このとき、人は、「体験する自己」を受け入れず、言い訳をしたり、ときには拒絶したり、認識さえしないということがあります。
この内的世界の葛藤が人を苦しめるということです。要は、脳内会議が揉めに揉め、精神的エネルギーを浪費し、次第に疲弊してくるということです。
この内的葛藤は、自己の崩壊の危機に瀕していると本人が考えるため、強い自己防御を起こします。(単なる自己概念の修正に過ぎないのに)
しかし、自信の喪失や自己否定によって、心理的に「自我」か弱くなってしまうと、思考の一貫性の欠如や認知のゆがみという人格障害の症状がでできます。参考リンク:ABC理論?認知のゆがみとスキーマ:アーロン・ベック
カールロジャースが考えた解決策
そこで、カールロジャースは、「体験する自己」と「自己概念」の一致(self-congruence)をカウンセリングやエンカウンターで実践しようとしました。
彼の考え方は、「人間には自然な傾向として『適応・回復・成長』へと向かうというもので、クライアントに潜在的な回復する力があると信じる」というものです。
ちなみに、患者ではなく「クライアント」と呼びは始めたのもカールロジャースだそうです。
話を戻します。
カールロジャースは、「体験する自己」と「自己概念」の一致(self-congruence)をするためには、自己概念を拡大する必要があり、そのプロセスを自己理解の促進と説明しました。
ただ、この完全なる一致は悟りを開いた仙人のようなもので、人間としては、永遠のテーマとも言えます。しかし、自分自身で、その不一致に折り合いをつけて、整合性をとることが重要です。
レジリエンストレーニングへの応用
この自己概念には、思考パターンや行動パターンも含まれますので、レジリエンストレーニングは、自己理解の課題は、避けて通れません。
下に6つのレジリエンスコンピテンシーがありますが、1番はもとより、2番5番6番とも深く結びついています。
え?6番強い人間関係?と思った方。
- 自分の事に気づく・発見する(自己の気づきSelf-awareness)
- 自分を自分で規制し、コントロールする(自己コントロールself-regulation)
- 現実的でありながら、可能性に着目する(現実的楽観力Optimism)
- 物事を異なった視点からでも見ることが出来る精神的な機敏性(精神的機敏性Mental、agility)
- 自分自身に活力を見出す強み(Strength of Character)
- 相互に支援し合うことが出来る強い人間関係力(関係性の力Connection)
「自己理解をしていないと、他者との関係に自分の意図しない影響を与え、いざこざの原因となっている」という点についてです。
人は、自己イメージと違う行動をとるとはまったく考えていません。しかし、上記のようにそれとは異なった行動をとります。そのとき、その行動を意識しなければ、それを見た他者は、どのように理解するでしょうか。
そうです。自分の意図しないことが、あなたの行動を通じて、他者に影響を与えるのです。
これは、リーダーシップだけでなく、コミュニケーションにおいても、大きな問題をはらんでいます。
コミュニケーションについては、また、別の機会に。