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「意志力」は、意志を実行するパワー!「意志が弱い」のではないです

2017/12/27

「意志力」というのは「セルフコントロール」と言った方が馴染みがあるかもしれませんが、「意志」の「力」としての「Will Power」の翻訳ですから、「意志力」でいきましょう。

今回は、「意志力」「Willパワー」についてです。

目次

「意志力」とは

我慢ができないというのは、我慢するという「意志」が弱いのではなく、その意志を実行する「力」が弱いのです。

[speech_bubble type="think" subtype="L1" icon="kao.jpg" name="著者"]意志はあります[/speech_bubble]
[speech_bubble type="think" subtype="R1" icon="namida.jpg" name="著者"] でも、パワーが無いのです[/speech_bubble]

「『意志』は、あるのです。もっと『力』がある午前中なら、我慢できたのに!」

と、言う話は合理的なのです。

この「意志力」を有名にしたのが、フロリダ州立大学のロイ・バウマイスター博士です。白髪(金髪?)で白いあご髭が印象的な格好良い紳士です。

もともと、ブドウ糖と意志力とに関連があるとわかったのは、低血糖症患者についての研究がきっかけだったそうです。低血糖症の患者は、普通の人よりも集中することが苦手で、腹を立てたときにネガティブな感情を制御することが上手く出来なかったという事でした。

「意志力」は体力と同じように使いすぎると消耗してしまうということです。しかし、同時に、回復させることもできるし、鍛えることもできるというもので、幾つか実証実験があります。

学生達の、ひとつのグループはクッキーを自由に食べるよう準備し、もうひとつのグループは、栄養のないグミのようなものを自由に食べさせました。

その後、両方のグループに、難しいパズルを完成させることを指示し、20分間挑戦してもらいました。(本当は解けないパズルですが、そのことは知らせず)

続けて新しいパズルを二つのグループに提示したところ、栄養のないグミを食べたグループは、新しいパズルに取り組む集中力が低下しました。それに対して、クッキーを食べたグループは、パズルに対してより長い時間取り組んだということです。

この意志力は、大脳の前頭葉が深く関わっているため、脳のエネルギーであるグルコース(ブドウ糖)が欠乏してくると、どうしても意志力が弱まってきます。脳は、身体の中で最も大食漢です。

意志を実行するパワーが欲しいとき

  1. 思考のコントロール
    一つのことに集中するとき。うまくいかない事が頭に浮かんでくるネガティブ思考から思考を切り替えるとき
  2. 感情のコントロール
    失敗をして落ち込んでいるときに、気持ちを切り換えるとき。カチッン!と来たときに、冷静さを取り戻すとき。
  3. 衝動のコントロール
    甘い物からの誘惑を抑えるとき。禁煙をしている時、タバコを吸いたいという衝動を抑えるとき
  4. 結果を出すためのコントロール
    締切間近でハイスピードで仕事を長時間やり続ける必要がある時に、集中力を切らさずにやり続けるとき。

逆の言い方をすれば、意志力は、上記のことによって、消費され、そのパワーの量には限りがあります。

更に、上記1~3は、レジリエンスにとって重要な点と言えます。

さらに、前頭葉のパワーが本能を司る扁桃体を抑えられなくなる症状は、うつ症やAC(アダルト・チルドレン)のものと同じで、「認知のゆがみ」を誘発させることになります。

ACや「認知のゆがみ」についての参考リンク:「認知のゆがみ」と「スキーマ」/スキーマを変える

何に意志のパワーを使っても源泉は一つ

ですから、バウマイスター博士は、「新年の抱負をリストアップするようなことはやってはいけない。リストに並んだ目標を実現するだけの意志力を持った人などいないのだ」と本に書いています。

1つの目標を実現しようとすると、その他の目標のために使うパワーのエネルギーが減ってしまうので、目標を絞ることが重要だというわけです。

「今日は、帰ったら調べ物をしよう」という意志が、仕事でいろいろと大変なことがあった日には弱まってしまうのも同じ理由です。

また、刺激をいつもより強く感じたら、意志のパワーが弱っているかもしれません。

意志のパワーが弱まっている人は、悲しい映画を見ると、より悲しく感じ、楽しい絵を見ると、より楽しい気持ちになり、感情に振り回されやすくなります。

我慢の後の誘惑には逆らえない

我慢したあとは、パワーが消耗しているので、次に来た誘惑に負けやすくなります。

試験期間中の学生は意志のパワーが消耗しているので、生活上のよい習慣をすべてやめてしまって、だらしない生活に陥りやすいものです。皆さんは経験がありますか?

このようなストレスにさらされ続けると、意志のパワーが消耗し尽くされ、その結果としてネガティブな感情をコントロールするパワーが低下してしまいす。

ダイエットで体重を減らそうとしている時の話です。当然、食べ物を食べないでいるとグルコースが減少し、それによって意志のパワーが減少していきます。

「食べないでいるためには意志のパワーが必要ですが、意志のパワーを得るためには食べることが必要になります」という笑い話にも感じる本当の話です。

意志力を上手く使う

意志力を温存し、使わないようにする

意志のパワーは、有限な資源なので、決心を一時に、たくさんするのではなくてひとつにする等、意思決定にはタイミングがあるので、エネルギーが消耗しきる前に、重要な意思決定を行うことです。

イスラエルの判事の調査で、昼食前の判決がおざなりとなってしまっていたというものもあります。

そして、余計なもの、例えば、「歯ブラシをどれにするか」といった選択にエネルギーを使い過ぎないようにすることです。

記録を付ける

自分を数値化することによって自分を客観視し、自分の努力の成果を数値で確かめることができるというものです。

記録を公開するなど友人とともに進めるとさらに効果が上がるそうです。

これは、禁酒会に参加するとか、禁煙を友人と一緒に行うのと同じで、自制心を外注しているような効果があります。

計画を立てる

計画を実行しなくても、集中力アップにつながります。

中途半端になっていることは、頭の中に浮かびやすいという研究データがあります。

計画の立案によって、このようなことが気になって、現在取り組んでいることに集中できないことを軽減します。

また、毎日計画を立てて実行するより、月ごとの計画を立てる方が良いそうです。

学生を対象に調査したデータによると、勉強の習慣を身につけるという点でも、勉強への姿勢という意味でも、一番成長が見られたのが、月単位の計画立案のケースでした。

「絶対止める」よりも「後でやろう」と考える

この方法は、脳を騙す手法で、「我慢するのではなく、時間が変わるだけ」という認知にすることが大事です。

無理して我慢しては効果がありません。我慢の後は、次の誘惑に負けてしまいますから。

意志力を高めるために

習慣を一つ変えてみよう

禁煙や禁酒のような難問にいきなり取り組まず、小さなこと、例えば、帰り道を1ブロック遠回りし、歩く歩数を上げるような継続できるものに取り組むことが意志力アップに効果的です。

一つのことで欲望(楽して家に帰る)をうまく抑えることができれば、生活のいろんな面に波及します。

悪い習慣を断ち切るよりも、よい習慣を確立しようとするときの方が、意志力が効果を発揮します。

意志力のために何を食べると良いか

バウマイスター博士と直接話したときに、「お菓子を食べながら集中できますね」と冗談を言ったら、「お菓子なんかは、ほんの一時しのぎで、そんなに長続きしないよ」と笑ってましたので、食べ過ぎには気をつけましょう。

さらに、糖分は、脳にとって快感となり、報酬系の中毒の危険をはらんでいます。二重の意味で注目が必要です。

むしろ、糖分の少ない高タンパクの食品やその他の栄養のある食品が良いそうです。たしかに、甘いものよりも効果が出るのに時間がかかるのですが、甘いものと同じように体内でグルコースに変化し、長続きします。

砂糖と同じく、食パンやジャガイモ、白米といった炭水化物やスナック菓子、ファストフードは短時間でグルコースに変化します。しかし、これらの食べ物を食べると血糖値が急激に上昇し、その後、急激に下降し、結局はグルコースが不足して意志力が低くなってしまいます。

ですので、野菜、ナッツ類、果物、チーズ、魚、肉などの短時間でグルコースに変わらない食物が、結局は、意志力を高めることになります。

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