アメリカ心理学協会が発表したポジティブ心理学ベースのアメリカ軍向けレジリエンスプログラムのCSF概要
2017/12/30
2011年にアメリカ心理学協会が取り上げたポジティブ心理学ベースの包括的フィットネスプログラム(CSF)の概要を紹介します。
これまで成人のレジリエンス強化は、一対一のカウンセリングでしか対処できないというのが常識でした。
そのような中、2011年1月18日に「軍隊の兵士のためのポジティブ心理学を活用した包括的メンタルヘルスプログラム」という表題で、アメリカ心理学協会の新しい代表的なプログラムとして当時発表されました。
正式プログラム名称は、Comprehensive Solder Fitness (CSF) programです。
軍隊を対象と言っても、命に関わるシリアスな話題を扱わないという条件で構築されたプログラムです。
目次
当時のアメリカ軍兵士の状況
2007年の調査によると、兵士の70%にアフガニスタンとイラク戦争の影響によるトラウマを持っている事が確認されていました。(このプログラム開発は2008年に始まりました)
164万人の帰還兵へのケアシステムの在り方や扱い方、さらには、PTSDや深刻なうつ病の治療、受け入れ先の社会環境作りと、そのコスト負担という問題を抱えていました。
ちなみに、鹿児島県の人口が170万人、熊本県が180万人です。でも、軍隊は全員18歳以上ですので、単純比較はできませんが。
どの範囲まで計算にいれるかは議論が分かれますが、年間20億ドル〜31億ドルの治療費等のコストが見込まれるというレポートがありました。
CSFプログラムの概要
このプログラムは、世界最大のレジリエンスプログラムであり、対象者も最も多岐に渡ります。そのため、単一の研修会だけでなく、複数のアプローチを組み合わせています。
もともとCSFは、以前からアメリカ軍にあるプログラムで、肉体的なアセスメントとそのレベルアップためのプログラムでした。
それが、2001年からのイラク戦争派兵にともない、その後、兵士達の肉体のみならず、精神的な障害もケアしていかなければならないことから、大幅にリニューアルしたようです。
プログラムとして下記の四つで構成されています。
- グローバル・アセスメント・ツール(GAT)
- 各現場、階層でのユニバーサル・レジリエンス・トレーニング
- GATの結果を踏まえた個人向け強みのトレーニング
- マスター・レジリエンス・トレーニング(By University of Pennsylvania)
当時のケーシー将軍は、隊員やその家族、軍の現場のみならず、もっと広く心理学の領域を通じて広がっていくだろうと語っています。さらに、彼は、「兵士は皆、やがて社会に帰っていく事になるので、社会全体にもこのプログラムはよい影響を与えるだろうと信じている」とも述べています。
CSFに対する効果性について証明する幾つかの論文と、それを反証する意見がありますので、別のブログで紹介します。
グローバル・アセスメント・ツール(GAT)
このアセスメントは、採用時から、キャリア上の適切なタイミングで実施されます。
肉体的なテスト(Army Physical Fitness Test)は、年二回実施しています。内容は、2マイルのランニング、腹筋、腕立て伏せの三つです。年齢、性別にポイントを設定して評価します。
一方、心理的な面は、4つの切り口でWebベースで実施され、このデータは個人のみに開示され、昇進等には一切使用されないとのことです。
内容は、あまり開示されていないので、もう少し調べてみて、見つかったらここに追加記載します。
ユニバーサル・レジリエンス・トレーニング
最初は、グループリーダークラスにリーダーシップトレーニングを含めて心理学的なトレーニングを実施するところから始め、続いて、ワークグループ単位でトレーニングを実施します。
個人向け強みのトレーニング
もともと、単なる予防のためのトレーニングではなく、「健康」を目的としたCSFプログラムと、繁栄やハイパフォーマンスをめざしたポジティブ心理学における、人間の強みや可能性を強調する点に、強くアメリカ軍は惹かれていました。
GATで、個人の強みを明らかにし、それを基に、メニューが作成され、上記のワークグループからのインプットも加えて、ワークグループ研修のフォローをエビデンスベースで各自に最適化されたWebを活用したバーチャルトレーニングが実施されます。
マスター・レジリエンス・トレーニング
このトレーニングは、10日間で行われ、下士官クラスが対象となっています。
内容は、ペンシルバニア大学のレジリエンスプログラムを基礎とするものが8日間で、後の2日間は、エンカウンターとのことです。
セリグマン博士達は2010年には、2,200人の人を対象にトレーニングを実施したそうです。
このマスター・レジリエンス・トレーニング(MRT)についての詳細は、「CSFプログラムの中のひとつ、マスター・レジリエンス・トレーニングの内容紹介in2011」に記載しています。