アメリカ軍に提供したペン・レジリエンス・プログラム(PRP)の全体像紹介in2011
2017/12/25
アメリカ軍のCSFの中の一つであるペンシルバニア大学のレジリエンストレーニングをベースとした「マスター・レジリエンス・トレーニング」の10日間の概要です。
以下内容は、アメリカン・サイコロジスト2011年1月号のMaster Resilience Training in the USAを参考にしています。英語の原本はここからMaster Resilience Training in the USAへ行けます。
アメリカ軍のレジリエンス・プログラム(CSF)の全体像ブログの日本語リンクはここからapa-resiliency-programへ
目次
ペン・レジリエンス・プログラム(PRP)
ペンシルバニア大学のレジリエンスの研究は、1970年代からなされていました。あの認知革命のアーロン・ベックもペンシルバニア大学です。
2000年当時、PRPの要素として、楽観性、問題解決、自己効力感、自己規制、感情の気づき、柔軟性、共感性、強い関係性が含まれていました。
そして、このプログラムは、小学生高学年から中学生に対して提供されていました。(現在は先生向けのトレーナー養成5日間研修をはじめ、軍隊、警察、スポーツチーム等を対象にデリバリーしています)
また、大学生むけにAPEXといううつ症や不安症予防のプログラムが並行しつ実施されていました。この試みは、ポジティブ心理学の(例えばキャラクターストレングス)実証のためでもありました。
そして、これらのプログラムの効果性についてのメタ研究も沢山あり、効果性の検証がなされました。
もちろん、反論の論文もあります。
CSFのマスター・レジリエンス・トレーニング(MRT)
トレーナーを育成するトレーニングの実施理由は、CSFトレーニングの受講者が百万人を超えるという量だけではありません。トレーナーになる人自身にレジリエンスのスキルが高まるというTrain the trainer モデルの有効性があるからです。
MRTは、PRPとAPEXを基礎に、軍隊の事例を作り込んで作成されています。この作り込みが成功の決めてだと私は思います。
最初の8日間でPRPのスキルを提供します。
はじめの5日間は大きなグループで実施し、それを四つの小グループに分け、各グループにファシリテーターがついて運営します。
モジュールは、四つで構成されています。
8日間の後半3日間は、トレーナーとしてのトレーニングで、深堀していきます。
モジュール1:レジリエンス
「一般的なレジリエンスに関する誤解を解いて、6つのレジリエンス・コンピテンシーについての学習」とサイコロジストに書いていますが、事例から解釈すると下記のようになります。
「一般的な誤解」というのは、「〜すべき」という軍人の一般的な考え方の事例を紹介し、その考え方が自分を傷つけているビリーフ(信念)の代表的事例を使っての導入モジュールです。
自分自身を傷つけている考え方の事例として「常にミッション第一」「失敗は絶対受け入れられない」等というものでした。
やはり、兵士がこのような使命感を強く思いすぎると、長年の間には、心身ともに傷つけることにつながり兼ねないですね。
それを一番始めのモジュールで、「良いのですよ。無理し過ぎないで」というメッセージから始めるのです。現役の偉い軍人や、ビデオから語られます。
合わせて6つのレジリエンス・コンピテンシーについての啓蒙に1日間の時間を費やします。
レジリエンスコンピテンシーの参考リンクは:レジリエンスコンピテンシーとは
モジュール2:メンタルタフネスをつくる
上記コンピテンシーを高めるために、認知行動療法を研修スタイルにモデファイしたスキルを習得します。
- ABC理論
- 思考のワナ
- アイスバーグ(深いビリーフ)
- エネルギーマネジメント
- 問題解決
- 破壊的思考(負の思考のスパイラル)の最小化
- リアルタイムの非生産的思考の対処
- 感謝の気持ちを育てる
このモジュール2の詳細は、別途のブログで紹介します。
参考リンク:マスター・レジリエンス・トレーニングのモジュール2:メンタルタフネスをつくる
モジュール3:キャラクターストレングス
受講者は全員WebサイトでVIA診断を事前に取り、そのデータを持ち込みます。
VIA診断リンク:強み診断(無料)
まずは、自分や他者についてのトップストレングスについて話し合い、明確にします。
そして、どのようなとき、自分が動機づけされているか、どのようなとき、非生産的になっているかについて、小グループで相互に話し合います。
ついで、グループの強みについて話し合い、各自がグループの目標実現のためにどのように強みを使えるか、また、お互いに相乗効果を発揮するためにはどうしたら良いかについて話し合います。
モジュール4:強い関係性
兵士同士の関係や家族の関係の強化がデーマです。特に兵士と家族とは平均9年離れていますので、このモジュールでメインに扱われています。
反応の4つのスタイル
次のような反応の仕方を紹介し、ロールプレイングを実施し、その後、日常を振り返るというアプローチです。
例:友人に「妻から、妻自身が昇進したと電話があった」と話しました。そのときの友人の反応は?
- 積極的建設的反応「すごい!どんな仕事?いつから?今までそれについて何か話してた?」
- 消極的建設的反応「良かったね」
- 消極的破壊的反応「息子からメール来てさ。聞いてよ〜〜」と、関係無い話し。
- 積極的破壊的反応「誰が子供の面倒を見るの?ベビーシッターは信頼できないよ。どうするつもり?」
賞賛を活用する
まさしく ポジティブアップのようなアプローチで、下記のやり方を紹介しています。
①相手を良く見、聞く
②どのように良い結果を導き出したかを明らかにする
③本音で賞賛する。短い言葉でも良い
アサーティブ・コミュニケーション
アサーションも結構大事なセッションでので実践的に声のトーンやボディランゲージを含めてロールプレイングを通じてトレーニングします。
最後の2日間(9、10日目)
この2日間では、現場に帰った時に今回学んだ事を、どのように応用していくかということを検討します。
小グループは12人、10日間常にメンバーは変わらず、ファシリテーターは、彼らの討議やプレゼンテーションを観察していて、必要があれば、追加のトレーニングや受講者の開催するレジリエンストレーニングにアテンドすることになっています。