レジリエンス強化のために「思考のワナ」から抜け出す
2017/12/23
私たちは常に正しく物事をとらえているわけではありませんが大抵の場合問題はありません。
ただ、問題は、私達に常に良い結果をもたらすとは限りません。
認知した情報に対して無意識に価値判断を下し、勝手に結論を導き出していることがあります。
このような認知のゆがみは誰でもあり、この認知のゆがみに、何らかのネガティブなエモーションが付随している場合があります。
また、心的エネルギーが低下してくると、この傾向が多くなります。
認知のゆがみが、あなたの社会的に適応しない行動の原因となっている場合が多々あるのです。
目次
誰もが「思考のワナ」にハマる
このような認知のゆがみはどうしても起こってくるものです。問題は、このようゆがみを「ワナにはまった」と認識して修正できることが重要となります。
たとえば、私たちの脳は、何か強いストレスを感じると、それを早く取り除こうとして判断を急ぎます。このとき、認知のゆがみが生じやすくなり、事実を必要以上にネガティブにとらえて、レジリエンスを大きく損なうことにつながるのです。
このように、誰もが何らかのワナに陥いる傾向があります。
8つの「思考のワナ」から抜け出す
自分がどんな「思考のワナ」に陥りやすいかを知り、そこから抜け出すきっかけについて話します。
思考のワナは主に8つに大別でき、誰もがこのうちの2~3つのワナに陥いると考えられています。
アーロン・ベックの認知のゆがみを、治療ではなく、レジリエンストレーニング用にペンシルバニア大学のセリグマン達が加工したものが、下記の8つです。
思考のワナ1 すぐに結論に飛びついてしまう
「私、なにか悪いことしたみたい」
状況を正しく把握せずに、自分が用意した結論に飛びついてしまいます。不安を感じたり、自分を責めたりと、不必要なネガティブ感情を抱くことで、適切な行動が取れなくなってしまいます。
このワナから抜け出すには?
- 「スローダウン」「スローダウン」
- 「根拠は何?」「どんな証拠がある?
気持ちを落ち着けて、自分の解釈が本当に正しいのか、ただの決めつけになっていないか、確かめる必要があります。
なお、これまでに自分がネガティブな勘違いをしたことはないか、ネガティブな予想が外れたことはないかなど、日頃から振り返っておくと、いざというとき考え直すためのトレーニングになります。
思考のワナ2 悪いところしか見えない
「このプレゼン、失敗だったな」
出来事のマイナス面ばかりに注意が向き、プラスの面に気づくことができません。状況を正しく理解できず、いたずらに傷ついたり、不安が強まり、焦りや緊張も増していきます。このため、パフォーマンスが低下してしまい、本来の能力が発揮できなくなります。
このワナから抜け出すには?
- 「何か見落としてない?」
- 「何かいいことは、起こらなかった?」
緊張や不安、焦りを感じ、ネガティブな面しか見えなくなってきたら、そこで立ち止まって、自分が見落としている点がないか、確認するクセをつけていきましょう。自分は本当に出来事の全体像が見えているのか、落ち着いて考えてみる必要があります。
思考のワナ3 悪いところは大きく、良いところは小さく
「悪いことばかり起こる」
自分の独自の基準に基づいて、出来事を過大評価したり過小評価する傾向にあります。このため、ほんの小さなマイナス面も大げさにとらえ、ネガティブな思考を膨らませていきます。自分が苦しむだけでなく、周囲も辟易してしまうので、人間関係も悪化してしまいます。
このワナから抜け出すには?
- 「悪いことばかり、気にしてない?」
- 「うまくできたことは、なに?」
ネガティブ思考がどんどん拡大し、抑うつ傾向が進んでいきます。そうならないためにも、自分ができそうなことを探して、実行に移し、成功体験を積み重ねていきましょう。自分の経験を通して、「自ら状況を変えられる」と実感することが、このワナから脱する近道です。
思考のワナ4 「原因はすべて自分」という考え
「私のせいだ…」
何か問題が起きると、なんでもかんでも反射的に「自分のせいだ」と考えてしまいます。自身の能力や責任が及ばない範囲のことでも、そのようにとらえるので、自尊心が傷つくことが多く、悲しみや罪悪感を感じやすくなります。
このワナから抜け出すには?
- 「他者や環境は、どんなふうに影響してる?」
- 「原因の発端は、自分以外にあるのでは?」
このワナにはまるのは、まじめで責任感が強い人が多いため、このような質問自体が、自分の価値観に反する場合もあるでしょう。しかしこれは、正しい思考を取り戻すためのトレーニングなので、臆せず取り組んでいきましょう。
思考のワナ5 「原因はすべて他人」という考え
「全部あの人のせい!」
先の「原因は自分」のワナと反対で、すべての問題の原因を、他者や環境にあると考えてしまいます。このため、他者への怒りを感じやすくなる一方で、自分の責任を認めようとしません。周囲からは、何もせずに批判ばかりする評論家だと見なされることもあります。
このワナから抜け出すには?
- 「自分との関連は、何?」
- 「原因の一端に、自分も関与してない?」
何か問題が起こったとき、他者や環境のせいにしていないか、自分の外に怒りを感じていないか、確認するクセをつけましょう。自分事として、自身の行動について振り返るクセができれば、どんな環境においても成長できる、レジリエントな心が作られていきます。
思考のワナ6 「いつも、すべて」という考え
「どうせ、悪いことばかり」
問題の原因を「いつもそうだから」「すべてそうなる」と考えてしまいます。このため、いつまでたっても具体的な問題解決ができず、自分が思い込んでいる通りの、ネガティブな結果を招きやすくなります。「悪いことが続き、繰り返し、ずっと変えられない」などと信じ込んでしまい、無力感や挫折感を感じやすくなります。
このワナから抜け出すには?
- 「いつも」とか「すべて」なんてありえない。
- 「自分で変えられることは、何かない?」
- 「コントロールできるところはどこ?」
自分の行動や、変えられることに着目し、実践していきましょう。たとえば問題が起こったとき、その人の「人格」のせいにせずに、「行動」に着目することで、解決の糸口が見えてきます。「自分はダメ社員だから」ではなく、「自分はこの点を上司に相談すべきだったかもしれない」などとらえ直すと前向きな行動につながります。
思考のワナ7 人の心を自分勝手に読む
「きっと、そうに決まってる」「どうしてわかってくれないの!?」
自分の思い込みで、他者の考えを推測して理解しようとします。「きっとあの人はこう考えているに違いない」「あの人はわかってくれているはずだ」などと決めつけを行なうことで、必要以上にネガティブな解釈が生じて、悪循環の結果につながっていきます。
このワナから抜け出すには?
- 「相手はどんなふうに行動した?」
- 「相手に自分の考えは伝えてある?」
相手の言動が、本当に自分に対して否定的なものだったのかどうか、自分の解釈を検証してみる必要があります。自分の決めつけや、説明不足で、勘違いや行き違いが起きているのかもしれません。可能であれば、相手に直接考えや意図を聞いてみるのもおすすめです
思考のワナ8 「感情をもとに解釈する」ワナ
「上手く行ったと思ったのに……なぜかうまくいかない」
今の自分の感情と結びつけて、他の出来事を解釈してしまいます。たとえば、試験が終わって、うれしい気持ちになると、その試験自体が「うまくいった」と考えてしまうような思考です。出来事を正しく判断できないので、誤解や行き違いが起こり当惑や混乱、落胆といった機会が増えます。
このワナから抜け出すには?
- 「自分の感情と状況が不一致だったことはない?」
- 「事実を知るために、相手にどんな質問をすべき?」
このワナにハマりやすい人は、「事実」「感情」「思考」を分けて考えるトレーニングが必要で、「思考のワナ1 結論に飛びつく」の解消法も効果があります。