大人の発達段階/発達心理学
2017/12/23
自分の欲求を満たすために他者を道具のように見なす人がいるかと思えば、「決まりだから」というようにまるで自分の意志が無いような人がいます。これは、個人の性格やパーソナリティだと思っていましたが、実は意識の発達段階に違いがあるようです。
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目次
発達心理学
発達心理学という領域で、3人の有名な学者が同時期に、まったく異なる国で同じような大人の発達段階について研究発表しました。これは偶然では無く、この理論の「真実の裏付けとなる証拠ではないか」と言われています。
今回はハーバード大学のロバート・キーガン教授の発達段階を紹介しましょう。
ポイントは、第4段階にある人は第1から第3段階の人の考え方を理解することができますが、低い段階の人から高い段階の人の考えを理解することができないという点です(例:第1段階の人は第2段階以降の人の考えを理解することができません)
したがって、発達段階がより高ければ、より多くの人の考え方を理解できるということになります。さらにはそれらを組み合わせて新しいものを生み出すことも可能となります。
5つの発達段階
第1発達段階 小学生くらい
まずは、発達段階の1段階です。この段階は言葉を覚えたての子供から小学生ぐらいの年代で、「具体的試行段階」と呼ばれています。具体的な事物を頭に思い浮かべて思考できますが、形のない抽象的な概念を扱うことはできない段階です。大人のみなさんは、この段階は卒業しています。
第2発達段階 思春期くらい
次の2段階目は、「利己的段階」「道具主義的段階」と呼ばれる段階で、中学生から思秋期の年代に多く見られますが、驚くことに成人の10%ぐらいにも見られるそうです。
いわゆる自己中心的な人で、自分が関心のある事だけに興味を示し、それ以外の事には見向きもしないというような人はこの段階にいます。また、自分の欲求や関心を満たすためなら、まるで他人を道具のように扱うのもこの段階の特徴です。ヒーロー番組の悪役の「世界征服(自分の欲求)を実現するなら部下は使い捨て」という考え方のようなイメージです。学校や会社でいじめをリードするような人もこの段階にいると言えるでしょう。
この段階の人の最大の課題は、「自分以外の人の目線で物事を見られない」という点です。そのため「周りが自分をどう見ているか」「相手がどんな気持ちになるか」ということを考えようとせず、理解もできません。
もし、自分がこの段階にいると感じる人は、自分を客観視できていますから、すでに次の3段階以上に到達しています。
一緒に仕事をしている他者がこの段階にいる場合は、「この仕事をあなたに与えた意図はどんなものか分かりますか?」というような質問をしてみると良いでしょう。この質問は、「相手の立場に立って考える」ためのもので、このような思考を繰り返しさせることで徐々に思考が広がっていきます。
残念ながら、この段階の人がまだ相手の意見をすんなり聞くレベルにありません。しかし、次の段階に行くにはあくまで自分で考え、自分の意見としてまとめてもらう必要があります。
第3発達段階 成人の70%が
第3段階は、他者依存段階で、慣習的段階とも呼ばれています。成人の70%に見られるそうです。
利己的な自分の世界から抜け出し、他人の視点で考えられるようになった状態です。しかし、いわゆる指示待ち人間で、自分で決められないため、他者や慣習に従ってしまう人です。世間体を非常に気にする人もこの傾向があります。自らの意志決定基準をもっておらず「会社のきまりで」「上司がこう言っているので」などという言葉を多用する傾向があります。
次の段階に行くためには、自分の欲求や関心などをより高次元にしていく必要があります。
例えば、自分でトレーニングする場合は、現在の会社や部門のあり方や仕事のやり方について思っていることをノートに書き出してみたり、同僚などに相談してみるところから始めてみましょう。
他者をトレーニングする場合は、自分の意見や仕事のやり方を考えるきっかけをつくるために、「~について、どう思う?」「この部分は任せるよ」というようなアプローチが効果的です。これを繰り返すことで、自分の考えが固まり、そのうちに自分の考えを外に出そうとするようになってきます。
第4発達段階 自己主導
第4段階になると自己主導段階と呼ばれ、他人の視点を持ちつつ、自分なりの価値観や意志決定基準を設けることができています。また、それを他者に伝え、主張します。そして、自立的に行動することがでるようになります。成人の約20%に見られるそうです。
この段階の問題は「自分ルール」ができあがってしまっているため、「自分が正しい」という思い込みが強くなり、他人の意見を受け入れられなくなる点です。また成功体験に縛られ、新しいやり方を試す勇気を持てないのもこの段階の特徴です。
この段階にある人は一度、今まで取り組んできた仕事を棚卸し、自分以外の人が自分を支えてきてくれたことに気づいたり、自分のやり方の欠点に気づくことです。
「自分が正しい」という自分の強すぎる正義感を実感できれば、自分のルールに柔軟性が生まれてきます。
第5発達段階 自己変容
第5段階の「自己変容段階」は成人の意識レベルの最も高い段階で、成人の1%しかいないと言われています。
この段階に到達すると自分ルールを絶えず更新し、常に新しい価値観や仕事のやり方を実践しています。何故なら、自分の価値観や意見にとらわれることなく、多様な価値観・意見などを汲み取りながら的確に意志決定しているからです。
この段階にある人たちは「自分」を確固たるものとして持っているのではなく、「時間や環境によって変化するもの」と捉えています。
また他人を自分の成長にとって必要不可欠な存在だと考えているため、他人の成長に対しても積極的に取り組みます。何故なら、他者が成長することによって、自らも成長するという認識(相互発達)を持っているためです。
他者と価値観や意見を共有し合いながら、コミュニケーションを図っていきます。
これは「才能」ではありません。単に成人としての発達段階が違うだけです。
あなたの意識段階は5段階の中のどこにあるでしょうか。