レジリエンストレーニングの理論と内容を知ってますか?

レジリエンスを高めるために、科学的な裏付けを理解しましょう。深く理解する事で、最大にレジリエンストレーニングの効果を高めることができるでしょう。

言葉

言葉の力/言葉がなければ、気持ちも論理もない!実在もしない!

2017/12/26

人は、考えてから言葉に置き換えているのではありません。言葉で考えているのです。しかし、たまに絵で考える人がいます。これは、バーチャルシンキングという一つの能力で、創造的なことを考える人によく見られる思考方法です。しかし、あなたは言葉の力をどの程度知っています?

目次

言葉は、見えないくて手に触れないものを感じさせる

言葉は、単なるコミュニケーションの道具ではありません。言葉は私達の思考に大きな影響を与えています。

例えば、「あなたの心臓は何処にありますか?」という質問には、胸を指して「ここにあります」と答えることでしょう。実際出して見せるわけにいきませんが、小学校か中学校の理科室に行けば、心臓の模型を見たり触ったりできることができるでしょう。

では次の質問です。「こころは、何処にありますか?」

この質問にどのように答えますか?ある人は、胸を指し、またある人は、頭を指すかもしれません。

「こころ」は見ることも、触ることもできません。

脳科学では、私の知る限り、まだ、「こころ」がどのように形成されているか説明できていません。

しかし、確かに「こころは、ある」のです。

私達は、五感で感じることができないものを簡単に理解できています。

これは、言葉があるからです。

言葉が無ければ、気持ちも無い?!

ハワイ大学の言語学者の早川博士が書いた本に、「言葉の無い原始人の時代。森の中の大木が自分の重さに耐えかねて折れた時、大きな音が森中に響きわたったでしょう。その森にいた原始人は、はたして、その音を聞いたでしょうか?」という一節があります。

続く一節は、「何だかの音波を感じることでしょうが、 現代人が感じるドンという音は感じることはできなかったことでしょう。それは、音が無いと同じことなのです」

続いて、同じ原始人が素晴らしい夕焼けを見たとき、「感動がおこるか?」それはノーです。原始人のこころには何らかの動きがあったかもしれませんが、「美しい」とか「感動」という言葉がなければ、そのような気持ちにはならないのです。

言葉は思考を変える?!

本来、思考は曖昧なもので、言葉に表現した段階で明確なものになります。

と、言っても下図のAという言葉を使っても、本来の思考や意味するところの青い部分と完全に一致するものではありません。

意味1

ここでAという言葉を自分の思考と決めると、Aの黄色の領域のみが残り、青のみの領域(思考のニュアンス)が徐々に消えていきます。

何故なら、記憶は言葉が強く残り、思考したことのイメージまでは記憶として定着しづらいものです。

これは、言葉が思考に影響を与えるということを意味します。

例えば、英語には「肩凝り」という単語がありません。そのため「背中が痛い」と表現し、肩は何の問題も無いとなります。ところが、日本語の「肩凝り」という言葉を知ると、途端に「肩凝り」を感じはじめます。

上記の「感動」を感じない原始人と同じですね。

最近、組織開発の世界で話題にあがる社会構成主義という社会学の考え方にもつながる話です。

認識しなければ、問題も実在しない!

社会構成主義とは、「現実の社会現象や、社会に存在する事実や実態、意味は、人々の頭の中で(感情や意識の中で)作り上げられたものであり、それを離れては存在しない」というものです。

簡単に言えば、身近で起こっている人が関与している様々なことは、自分を含め人々が認識することで初めて存在することになるというものです。

もっと平たく言えば、人が「問題だ」と思わなければ「問題は存在しない」ということで、誰も気づかなければ、存在すらしないという考え方です。

どこか「肩凝り」の話とつながるところがありますね。

言葉の力が、レジリエンストレーニングを左右する

言葉がないと思考がはっきりしないというだけで無く、感情や感覚も、それを表す的確な言葉を持っていないと、感情や感覚そのものを感じなくなるということです。

ポジティブ感情を強化する言葉の力

よくレジリエンストレーニングで、ポジティブ感情を表す単語をたくさん書き出す実習をしてもらいますが、人によってかなり差があります。

レジリエンストレーニングをもっと効果的に参考リンク:レジリエンストレーニングをもっと効果的に

言葉は、それを読むだけで感情を想起させる力がありますから、この実習はみんなが明るくなります。

ボキャブラリーの多さは、非常に大事ですね。

分析を可能にする言葉の力

一方、論理的思考のスタートは、「物事を分けて考える」ことです。

問題や事象は、幾つかの部分に細分化できます。このときに言葉の使い方の上手い/下手の差が出てきます。

言葉には、たくさんの内容を含んだものがあります。ものごとを概括的に表現する言葉です。例えばは、「果物」は、リンゴやブドウその他多くのものを含んでいます。

それに対して、「リンゴ」という単語は、大分含まれものが少なくなります。ブドウやミカンとは違うという意味で、限定的な単語です。

様々な果物が入っているカゴを見て、「果物」という言葉しか知らなければ、カゴのの中を細分化しようとすると、丸い物とそれ以外というように曖昧なものしか考え出せません。

これは、頭が良い悪いではないのです。頭の中で表現する言葉がないか、言葉で表現する力が無いので、思考がそこで止まってしまいます。

自分の考えを表現する言葉の力

このようなことは、日常生活ではあまり問題とならないかもしれませんが、レジリエンスを高めようとすると、チョット困ったことになります。

レジリエンストレーニングや認知行動療法では、「自分が過剰にに反応した外部の刺激に対して、自分がどのように考えたか」という事を言葉で表す手法をよく使います。

このとき、言葉で上手く表現できないと厳しものになります。治療の場合は専門家がサポートしてくれますが、レジリエンストレーニングでは自分の表現力に大きく依存することになります。

具体的なレジリエンストレーニングの演習については、下記のリンクをお読み下さい。

ABC理論がレジリエンスに効果を発揮するための脳科学的説明

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